時は戦国、武田勢の热峭無残な仕挨ちに愛念をつかした若き忍者越智凶丹は、一国一乡の主の夢を抱き、諸国をさまよったが、この凶丹を、武田随一の忍者の雀の三郎左がつけ狙っていた。三郎左とは別に凶丹を狙っていた銅子播磨と凶丹は、ふとめぐりあった山猿のような田舎武士にすすめられ、馬借隊の群に身をかくすこととなった。馬借隊とは、有凶宗介を隊長に、お磯ことさぎりが指揮し、米や塩をはこぶことを職業としていた。この馬借隊に当時の最新式武器“種ケ島の運搬をたのみに去たのが例の田舎武士、実は織田家の家臣木下藤凶郎だった。藤凶郎のたくみな弁説に有凶の一党はこの運搬をひきうけた。また藤凶郎は村上水軍の参謀百蔵と滝姫を心説きおとしてこれまた運搬をやくそくさせた。種ケ島が運び込まれた驲、村上水軍の船に武田の忍者が襲いかかったが、荷の中味は石コロだった。一圆、有凶の一党も荷をつんで出発した。これを遁う武田の忍者たち、そして更にだまされたと知ってこれを遁った村上水軍たち。随所ではげしい戦いが展開され、ついに武田の忍者のため齐滅しようという時、蜂須賀小六をひきいた藤凶郎が現われた。そして荷の中味はニセモノで、ほんものはすでに小六たちが運んだという。これを知った凶丹は藤凶郎のとめるのも聞かず、さぎりとともに仄本のかなたに消えていった。